妖精。……
あの妖精は、見るからに前者だったわね。本当のところは調べてみないとわからないけど。
この手の存在にしては、随分成長していたわ。年齢も……見た目よりは高かったと思う。もしかすると、私より年上かもしれない。もちろん、妖精だから……子供にしか見えないし、精神もその程度だけど。
危険だった……あのまま放置しておくことはできなかったわ。確かに私やレミィと比べると……いえ、その辺の野良妖怪あたりに対してでさえ、大した力はなかった。でも、そういう問題ではないの。
咲夜に任せることは出来なかった。あれは人間に任すべきことじゃなかったからよ。かといって、レミィの分野じゃないしね……え? 門番? ……そんなことしたら館の門ががら空きになるじゃない。それとも私に門衛をしろって言うの? 冗談じゃないわ。
ともかく、それで……私はするべきことをした……したはずだった。
信じられるかしら? あんなことになるなんて。
まあ、あれはたくさんの原因が複雑に絡み合って出てきた結果だし、それに私がいなくても同じことだった。……同じことになったと思うわ。だけど私は偶然にしろ必然にしろ関わったし、そのことで後悔も安堵もしていないわ。
そう、だけど……ああ、不覚ね。本当に。あんなことに……。
もう、そのことはノートに書いてあるわ。事実の全部を、どんなつまらないことも一つ残らず、私の知る限りのことをね。
でも、私はあれを、この目で見てしまった。……何故なのかしら。事実の全てを書いたはずなのに、私は何も書いていない気がする。真実の何をも、何一つ書き表していないような……。それほどまでに、何故、あれは、あんなに。何故……――