いやぁ、私は何にもしてないと思うよ。だってあれじゃん。私達は目立ってなかったしさ。ま、最初のときは姉さん達もいなくて、それに何だか面倒事っぽかったからね。さっさと退散したほうが良かったのよ。あいつの隣にいると寒かったし。
結局は、最後まで付き合っちゃったけど。しょうがないじゃん、メル姉さんがまたいつもの病気で、考えなしに首突っ込もうとするから……。ルナ姉さんも止めてくれればいいのに、わかってるんだかわかってないんだか。まぁ、正直後悔したね、ちょっと面白いことだったからって姉さんたちに喋ったのは。
今どうかって言えば、結果的には良かったんだと思うよ。最初っから知らなけりゃ悩むこともなかったけど、途中で引き返すのほどきまりの悪いことはないしね。私達の演奏も少しは力になったと思えば、悪い気はしないよ。ボランティアってのが気に入らなかったけど、最後にあんなプレゼント貰っちゃったし。人間万事……ってやつ? 私達は幽霊だけど。
何もしてないっていうのは嘘じゃないよ。特別何かしたわけじゃない。ただ弾いて叩いて見てきただけさ、いつも通りだよ。
まぁね、わかってるよ、本当はね。私達は演奏しに行った。あの勘違いな妖精のために。後から思い出してみると鼻息荒くしちゃってまぁ、恥ずかしいったらありゃしないけどねぇ。
ともあれ、私達は行った。私達の方なんか誰も見てなかったけど……そんなのは関係ないよ。音楽ってのは肌で聞くものじゃん。あそこはちょっと音響悪かったけど。そうこうしてるうちにストンと唐突に終わるわけ。楽しい宴会と同じことってね。だから、正直に言うと何があったのか、あんまり良くは覚えてないんだ。良く言うでしょ? 観客はみんなカボチャって。
その後は……私はまだ良かった。ルナ姉さんもここ一番には強いよ。でも、メル姉さんが大変だったね。普段が普段だから……そう、まぁ、大変だったよ。
うん、ま、そんなわけで宴は終わったんだ。後はもう気にしない。私達だって妖精と似たようなもんだしね、今を生きればそれでいいのよ。幽霊だから生きるって言うのも変だけど。……って、そのとき会った死人みたいな顔色の魔女が言ってた。その辺はどうでもいいんだけどね。私達はまたいつものように楽しく演奏して、楽しい宴会にお呼ばれすればそれでいいのよ~。
だけどね、今――姉さんたちにはまだ言わないで欲しいんだけど――ちょっとね。折角だから、書いてみようと思ってるのよ。え? 何をってそりゃもちろん、曲だよ。今までそんなのは考えたこともなかったけど――で、出来たらあそこで演奏するのね。音楽は風に乗ってどこまでも届くし、心に染み込んでいつまでも残る。いいじゃん、そういうのってさ、ねえ? そう思わない?――